手に取ったきっかけは,押井守監督の「イノセンス」に出てくるセリフ。
「自分の面が曲がっているに鏡を責めてなんになる。」
これは「査察官」の扉に掲げられた言葉でした。
- 作者: ゴーゴリ,浦雅春
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2006/11/09
- メディア: 文庫
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3つの作品は全編,落語調で訳されている。
1つ目の「鼻」は,
そもそも荒唐無稽な話であることと,読み慣れない落語調だったため,取っつきにくかった。
それに対しては,巻末の訳者解説に,落語「あたま山」を引き合いに出して,
落語との親和性について書かれてあり,なるほど。と感じた。
このシリーズ光文社古典新訳文庫は数冊持っているが,
すべてに共通して言えることは,あとがき・解説がとても秀逸なこと。
2つめの「外套」は,長い名前が頻繁に出てきて読みにくかった。。。
3つめの「査察官」は,
劇の脚本をそのまま訳されており,地の文がないせいか,
落語調をあまり感じず,違和感なく読めた。
読んでいる時に,水戸黄門のこんなエピソードを思い出した。
(内容はだいたいこんな感じ)
悪さをしている代官と商人のもとに
水戸黄門がやってくる。という情報が入る。
悪者たちは,城下にいた水戸黄門らしき一行を見つけ,
接待し穏便に済まそうとする。
(間違えられた)水戸黄門一行は,
ばれる前に旅籠を抜け出そうとするが,弥七にみつかる。
本物の水戸黄門は,彼らを利用し,悪を裁く。
結末は違うが,もしやこのエピソードは,
「査察官」をベースにしているのでは?と思えてしまう。
総じて,前半2つの話は,そんなにおもしろいとは感じなかったが,
「査察官」と解説はおもしろく読めた。