「ひとり日和」青山七恵
芥川賞が発表され,文藝春秋の9月号も発売されたので, 急いで,前回の芥川賞受賞作「ひとり日和」読みました。
遠縁のお婆さん(吟子さん)と一緒に暮らすことになった 若い女性(知寿)の1年間を描いています。
春,夏,秋,冬と春の手前という5段で構成されていて, それぞれが知寿の思いを象徴しているようです。
ストーリーは,知寿と吟子さんの恋がベースになっていますが, 二人の過去の扱い方の対比が強く描かれています。
知寿は,子供のころからまわりの人の"ちょっとしたもの"を失敬し, それを大切に持ち続け,思い出としている。
反面,吟子さんは飼ってきた猫の名前を忘れる。 死んで遺影となると猫たちは 一番最初に飼っていた猫の名前「チェロキー」になってしまう。
知寿のそんな過去を引きずる思いは, "春~冬"までのとても平坦で閉塞感のある文章に表れているのではないでしょうか。
そして,知寿は「チェロキー」の遺影の後ろに失敬してきたものを置き, 思い出を昇華させる。
"春の手前"では,開放感のある明るい文章となり, "春~冬"との差をとても心地よく感じます。
とても読後感のよい作品だと思います。
(移行前にいただいたコメント)
はじめまして
ひとり日和
読みました。
なんとも温かい小説でした。
(August 14, 2007 08:48:39 AM)