きまブログ

2022-12から再開しました。

「車輪の下で」

車輪の下で 解説によると,著者ヘッセは, 本作について(受け入れられないのでは?)と あまり自信がない感じのコメントを残しているようです。 この小説は「少年が学業に挫折し,心に傷を負う」というストーリー。 100年前に学業で挫折する人というのは,かなりのレアケースだと思いますが, 多くの人が高校,大学を受験する現代日本においては, とても身近なテーマであり,主人公ハンスに共感する人は多いはずです。

自伝的な小説とされる本作は, ヘッセにとっては,当時の教育システムへの批判だったかもしれませんが, そこに,100年後の日本においては 普遍的ともいえるテーマが内在していることは知る由もないはず。 そして,少年の抑圧に苦しむ心情と美しい風景描写の対比により 紡がれる物悲しい文章は, 時代や洋の東西を問わない,この作品の素晴らしさだと思います。

また,以前も書いたのですが,この光文社古典新訳文庫シリーズは, 訳者による解説が素晴らしい。 著者ヘッセの自伝的小説とされるこの作品を実際のヘッセの人生と 比較・引用しながらの解説はとても分かりやすく 読了後も,解説で引用されている部分などを何度か読み返し, 楽しむことができました。 やはり,実際に訳し熟知されているからこその文章なのでしょう。


新訳がなければ読むことはなかったであろう,この作品を含めて, とても平易に訳されている「光文社古典新訳文庫」は, いままでに, ・「初恋」トゥルゲーネフ ・「黒猫」ポー ・「クリスマス・キャロルディケンズ ・「1ドルの価値」O・ヘンリー と「タイトルは知っているが,内容を知らない作品」 を中心に読んできました。

次は以下の4作品を読んでみようと思います。 ・「赤と黒(上)」スタンダール ・「カラマーゾフの兄弟(1)」ドストエフスキー ・「武器よさらば(上)」ヘミングウェイ ・「宝島」スチーブンソン

(ブログ移行前にいただいたコメント)

●Re:「車輪の下で」(05/25)

訪問ありがとうございます。
高校生の頃読みましたが、昔は題名が「車輪の下」と「で」がなかったのですが新訳ではついているのですね。
トゥルゲーネフの「初恋」やポーの「黒猫」もその頃読みました。懐かしいですね。
(June 6, 2008 10:59:50 PM)